郵便物に書かれた「親展」の意味ご存じですか?
今日はあまり見かけない記載のある封書が届いたので、ちょっとその辺りのことを書いてみます。
問題の封書というのがこちらで、保険会社からの郵便物なのですが、あまり見かけない記載というのは「契約者様親展」という表記です。
単に「親展」と書かれた封筒を受け取ることは案外多いと思います。銀行や証券会社、クレジット会社から送られてくる郵便物などはほとんどが「親展」と書かれていると思います。
これは同日一緒に届いた野村証券からの封書ですが、「重要」と共に「親展」の表記が見られます。
弊所でも「親展」でお送りすることはよくあるのですが、正直なところ受け取られた方が「親展」の意味をどこまでご理解されているのかと思っていたりします。
「親展」とは?
「親展」とは、「名宛人が直接開封してください」という意味で使われるもので、マナーとして名宛人以外の第三者が開封することをを禁じている郵便物で、個人情報や機密性の高い重大な内容の書類に使われることが普通です。
借金の督促状などはその最たるもので、他の人には見られたくないですよね。
だとすると、冒頭で取り上げた「契約者様親展」というのは、「契約者以外の人は開封しないでくださいね」という意思表示をした郵便物ということなのでしょうが、ここで疑問に思うのが「契約者って誰?名宛人のこと?」そもそも、契約って何の契約なのかどこにも記載されていないのでわかりません。我が家では同じ保険会社で妻も娘も契約しているので送り主の保険会社名だけでは契約者を特定することはできません。
これまで、あまり気にしていなかったので私が気付かなかっただけかもしれませんが、こういった表記ってよくあるんでしょうか?
個人的には、一般的に流通している「親展」という二文字を敢えて変更する意味がわかりませんし、かえって混乱させるだけのような気がしますけど…
「親展」を勝手に開封したら罪に問われるの?
親展とあれば名宛人以外は開封してはいけないという意味ですが、法律で決まっているわけではなく、いわば慣習の域で、前述したとおりあくまでマナーの範疇のことなので、親展の郵便物を開封したこと自体をもって犯罪として罪に問われることはありません。
会社などで上司宛に「親展」で届いた郵便物を、気を利かせたつもりで開封して渡したりしたらビジネスパーソンとしての資質を疑われ将来はないかもしれませんけど。
「親展」でなくとも郵便物を勝手に開封したら罪になる!
…場合もあります。
刑法第133条の信書開封罪です。
刑法第133条
正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、1年以上の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
「信書」とは、特定の人から特定の人に宛てた文書で、必ずしも郵便物である必要はなく、意思を伝達する文書であれば信書となります。逆に、小包などは信書にあたりません。
ここでちょっと蛇足ですが、意思を伝える文書を信書とすると、浮気相手とお忍び旅行へ行った時の写真が「親展」で送られてきた際、配偶者が勝手に開封して浮気がバレた場合どうなるのか?
大分前に、お酒の席で知り合いの弁護士に聞いたところでは、単に写真だけなら信書とは言えないだろうという事でした。
また、以前から浮気の疑いのある夫へ女文字で封書が届いたので、妻が勝手に開封した場合、妻の行為は「正当な理由」になるか?
という質問には、笑いながら「なる!なる!そりゃあ正当な理由だっ!」と言ってました。
まぁ、どちらもあまりあてにならない、単なる酔っ払い弁護士の話でしたが…特に正当な理由の辺り(笑)
因みに信書開封罪は親告罪なので、開封されたから直ちに罪になるわけではなく、訴えられてはじめて罪を問われることになります。
そもそもの話…
「親展」であろうが、そうでなかろうが、「信書」であろうが、そうでなかろうが、たとえ家族であっても他人宛の郵便物を開封するというのはマナー違反といえるでしょう。
「親展」の表記で郵便物の発送を行う機会が比較的多い身としては、せめて「親展」とあったら開封せずに名宛人に渡してほしいと思います。
時々あるのですが、「家族には内緒で遺言書を作成したいので、そちらの郵便物は事務所の専用封筒ではなく普通の白封筒で先生の個人名だけにして、親展だとか重要だとかいうのも書かずに送ってください」と言われます。なまじ「親展」などとと書かれていると「何これ、行政書士事務所からって何なの!」と突っ込まれてしまうそうです。
なかなか難しいところですね。
遺言書の作成、相続手続きに関する無料メール相談をお受けしております。