配偶者居住権のメリットとデメリット
配偶者居住権の要件
先ず、メリット、デメリットの前に確認しておくべき事として『配偶者居住権』を取得するには一定の要件があります。
『”配偶者”居住権』というくらいですから、被相続人の”配偶者”であることが大前提で、この場合戸籍上の配偶者である必要があり、いわゆる内縁関係の場合は配偶者居住権の要件に当てはまりません。
上記の前提に加え以下の3点全てを満たす必要があります。
▶相続開始時に被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していないこと
▶配偶者が、被相続人が所有していた建物に、相続開始時に居住していたこと
▶①遺産分割、②遺贈、③死因贈与、④家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと
(①は相続人の間での話合い、②③は配偶者居住権に関する遺言又は死因贈与契約書がある場合、④は相続人の間で①遺産分割の話合いが整わない場合です。)
配偶者居住権 は登記しなければならない
配偶者居住権は、前記の成立要件を満たしていれば、権利として発生していますが、配偶者居住権を第三者に対抗するためには登記が必要であり、居住建物の所有者は配偶者に対して配偶者居住権の登記を備えさせる義務を負っています。
※ただし、配偶者居住権の設定の登記は、配偶者居住権の成立要件ではありません。
配偶者居住権の設定登記は配偶者(権利者)と居住建物の所有者(義務者)との共同申請となり、配偶者居住権の設定登記ができるのは建物のみでその敷地である土地には登記できません。
※亡くなった人が建物を配偶者以外と共有していた場合は配偶者居住権の対象となりません。
配偶者居住権のメリットとデメリット
▶住み慣れた自宅に住み続けられる
▶不動産以外の現預金も相続することが出来る
▶登記により第三者に対抗できる
▶住まなくなっても自宅を売却できない
▶配偶者居住権は譲渡できない
▶配偶者居住権を放棄すると、所有権者に贈与税がかかる
配偶者居住権の選択は慎重に
現代は医療技術の発達などにより、平均寿命は延びる一方です。しかし、必ずしも健康な状態で最後まで寿命を全うできるかという話とは別で、介護が必要となる状態での余命も相当高い確率で覚悟しておく必要があります。
そうなった場合に、所有者が自宅を売却して老人ホームの入居費用にあてたいと思ってもスムーズに手続きを進められない場合もあります。
現在の健康状態、所有権者との密度、関係性などを十分考慮して決断する必要があるでしょう。
金銭のように定量化できるものや、法的権利の有利不利といったことだけでない、実生活に沿った諸事情を考量することが大切です。
弊所では多くの事例とこれまでの経験から適切なアドバイスをさせて頂くことが可能です。
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