遺言の種類「特別遺言」
以前このブログで「遺言には3種類ある」というタイトルで「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」について説明しましたが、今回はこの時に説明を省いた『特別遺言』について簡単に説明しておこうと思います。
遺言は大きく分けて2つの方式がある
遺言は、大きく分けて2つの方式があります。普通方式遺言と、特別方式遺言です。
「遺言には3種類ある」で説明した3つの遺言はいづれもこの内の『普通方式遺言』で、いわゆる一般的な遺言になります。
一方『特別方式遺言』とは、遺言者の死亡が迫っている場合や遺言者が一般社会と隔絶した環境にあるため、普通方式による遺言ができない場合に限って認められる遺言です。
普通方式遺言と特別方式遺言の大きな違い
普通方式遺言と特別方式遺言のお最も大きな違いは、特別方式遺言には有効期限があるという点になります。
特別方式遺言は、遺言者が普通方式遺言ができるようになって(死亡が迫っている状況や一般社会との隔絶の解消)から6カ月間生存した場合は、特別方式によって作成した遺言は無効になります。
対して、普通方式遺言には有効期限はありません。遺言者が別途新しい遺言を残した場合には、新しい遺言の方が有効になり、前の遺言は効果になりますが、それ以外に特に前の遺言書が有効期限切れで無効になるということはありません。
特別方式遺言の種類
特別方式遺言には『危急時遺言』と『隔絶地遺言』に分かれ、更に危急時遺言は、「一般危急時遺言」と「難船危急時遺言」に分かれます。隔絶地遺言は「一般隔絶地遺言」と「船舶隔絶地遺言」に分かれます。
遺言の種類まとめ
なんだかややこしくなってきたので、遺言の方式と種類を図にしておきます。
特別方式遺言の概要
特別方式遺言は、遺言の方式のひとつで、特別な状況で作成するものです。普通方式の遺言を作成することができない場合に利用されます。
一般危急時遺言
(死亡の危急に迫った者の遺言 第九百七十六条)
一般危急時遺言は、病気や怪我などで生命に危機が迫っている時に作成する遺言で、このような場合本人が筆記することが出来ないことがほとんどでしょうから、証人1名に口頭で遺言を伝え代書し、それを他の証人2名が確認したうえで、証人3名が署名押印をして作成されます。尚、本人の署名や押印は必要ありません。
作成された遺言書は、遺言書作成から20日以内に家庭裁判所での確認が必要になります。
難船危急時遺言
(船舶遭難者の遺言 第九百七十九条)
難船危急時遺言は、船や飛行機に乗っている際に危難が迫っている状態で作成する遺言で、証人2名が必要で、本人が自筆できない場合でも証人2名のうちの1名に口頭で伝えもう1名の証人と2名の署名押印で済みます。
一般危急時遺言と同様に家庭裁判所で確認してもらう必要がありますが、日数の決まりはありません。
一般隔絶地遺言
(伝染病隔離者の遺言 第九百七十七条)
一般隔絶地遺言は、伝染病等で隔離されている場合や、刑務所に服役中の場合に作成する遺言で、作成は本人が行わなければならず、警察官1名と証人1名の立会による署名、押印が必要です。
家庭裁判所の確認手続きは不要です。
船舶隔絶地遺言
(在船者の遺言 第九百七十八条)
船舶隔絶地遺言は、長期間の航海で陸地から離れている場合に作成する遺言で、作成は本人が行わなければならず、船長もしくは事務員1名と証人2名の立会いによる署名、押印が必要です。因みに、飛行機は搭乗時間が短いため該当しません。
家庭裁判所の確認手続きは不要です。
まとめ
特別方式遺言は、「特別」という言葉の通り特殊な状況を想定した遺言で、一応法律上で認められてはいますが、現実問題としてこのような形で遺言を作成するというケースは、めったに無いと思いますが、雑学的知識として抑えておいても良いかもしれません。
まあ、難船危急時遺言で「これから船が沈没する」「飛行機が墜落する」という時に、証人2名に遺言を託したとしても、そもそも証人だって生還できるかどうかわからないんですよね…
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