遺産分割の際の不動産価格は「相続税評価額」?

昨日、国税庁より「路線価」が発表されましたね。土地の価格(路線価)は2年連続で上昇したそうですが、それはさておき、不動産の価値を表す指標のひとつに「相続税評価額」というものがります。そして、この「相続税評価額」は自宅など市街地の土地であれば通常「路線価」によって決まります。

不動産評価額の算定は複雑

不動産評価額の算定は複雑で、相続でトラブルを引き起こしがちな一因です。不動産は高額になるうえ「一物四価」ともいわれるように、ひとつの物件に四つの価格が存在し、それぞれに指標があります。

複数の相続人が存在し、不動産を含めた遺産をどのように分割するかという「遺産分割協議」を行う際、不動産を売却して現金化したうえで分割するのであれば、特に難しい問題もありませんが、相続人の中で誰か一人が不動産を相続する場合、その不動産を幾らと算定するかという問題が生じます。

不動産を相続する人から見れば、できるだけ安価に見積もった方が他の遺産も相続できる可能性が出てきますし、他の相続人からすれば、できるだけ高価に見積もった方が他の遺産を分割せずに済みますので、当然に両者では利害が対立することになります。そのため、不動産の価額を幾らと見積もるかは「遺産分割協議」を行う際の重要な要素となります。

一物四価

不動産の評価について言われる「一物四価(一物五価とも)」ですが、具体的には以下の4つになります。

  1. 相続税評価額
    相続税評価額とは、相続税や贈与税を計算するときの基準となる課税価格のことです。
  2. 時価
    実際に市場で取引される価格で、「実勢価格」とか「流通価格」ともいわれたりします。厳密には実勢価格と時価では微妙に異なるのですが、同様の条件の物件が今どのくらいの価格で取引されているかということで良いと思います。
  3. 公示価格
    その年の1月1日における全国の標準地の1㎡当りの価格で、建物がある場合は建物がない更地として評価されます。
  4. 固定資産税評価額
    不動産の所有者に課される固定資産税や都市計画税のほか、不動産取得税や登録免許税の算定基準となる価格です。

「相続」の全てに用いるから「相続税評価額」…

というわけではありません!

相続税評価額は、前述した「一物四価」の中で唯一「相続」という文字が使われていることもあって、遺産分割協議においてもこの価格を基に相続割合を決めようとして、「いや、もっと高く売れるはずだ」などと、他の相続人から文句が出てトラブルになってしまうこともあるようです。

「相続評価額」には、確かに「相続」という言葉は使われていますが、同時に「税」という言葉も入っているように、あくまで「相続税」を決める際の指標であって、遺産分割の際の基準価格として国が示しているわけではないので注意が必要です。

遺産分割の際に不動産をどのように評価するかというのは、最終的には相続人間が合意できる価格ということになってしまいますが、一般的には2の「時価」ということになります。

因みに、国税庁の「財産評価基本通達」によると、「時価」とは以下のように説明されています。

財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。

国税庁 法令解釈通達