自筆遺言書は封筒に入れ封印しなければ無効か?

一般的に「遺言書」というと、きちんと封筒に入れられ封印したうえで厳重に保管されているイメージがあります。

ネットなどで遺言書の書き方を検索しても、作成した遺言書は封筒に入れて「開封前に必ず家庭裁判所で検認を受けるように」などと検認を促す文言を書いておくように説明されていることがほとんどです。

では、封筒等に入れず裸のままで保管されていた遺言書は無効なのでしょうか?

遺言書は封筒に入れなくても有効

結論から言ってしまうと、遺言書は必ずしも封筒に入れて封印をしておく必要はありません。裸のままでいいですし、クリアファイルのようなものに入れておいてもかまいません。

もちろん、作成した遺言書自体に不備があれば無効となってしまいますが、正しく作成された遺言書であれば、「封筒に入っていないから」「封印がされていないから」といった理由だけで無効になることはありません。

「自筆証書遺言書の場合、家庭裁判所の検認が必要で、相続人全員が集まり裁判所で開封してもらう」と説明されていることが多いため、自筆した遺言書は封筒に入れておかなければいけないと思い込んでいる方も多いようですが、法律的に必ず封筒に入れておくという決まりはありません。

封筒に入れておいた方が”それらしい”

とはいっても、冒頭にも書いた通り遺言書というのは、「きちんと封筒に入れられている」というイメージがあるのも事実なので、裸のままのものやクリやファイルに入れられたものは、単なるメモ書きと勘違いされてしまう可能性もありますし、容易に中身を知られてしまうので、内容と発見者次第では破棄されたり隠蔽されたりすることも考えられます。

そういったトラブルを避けるためにもしっかりと封筒に入れ”遺言書らしい”体裁で保管しておくことが良いでしょう。また、封印しておくことで勝手に開封されることを抑止する効果もあります。

封筒の種類や書くべきことも決まりはない

遺言書は「封筒へ入れなければならない」といった決まりもなければ、使用する封筒の種類や、封筒への書き方にも法律的な決まりはありません。

表に「遺言書」と書いて、裏面には「裁判所の検認を促す旨の文言」を書き、日付、署名をしたうえで、遺言書に使用したものと同一の印鑑で封印をする。というのが一般的に推奨されているようですが、このような形式にこだわる必要はありません。

一般的には以下のような体裁が推奨されていますが、必ずしもこのような形式である必要はないということです。

遺言書の封印例(イメージ)

裁判所の「検認」は遺言書の有効無効を判断しているわけではない

今回の記事のテーマからはちょっと脱線しますが、「封印されていない遺言書は無効」と誤解されているのと同じように、家庭裁判所の「検認」についても誤解している方がいるようですが、「裁判所の検認を貰えば、それが絶対的に有効な遺言書として保障された」ということではありません。

裁判所では、「検認した時点で、これこれこういういう内容の遺言書が存在しました。」ということを明確にしただけであり、遺言書に書かれた内容が裁判所の下で法的に保障されたわけではありません。

裁判所のホームページでも、「検認」について、以下のように説明されています。

「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

裁判所 遺言書の検認