自分でつくる遺言書 〜失敗しないための考え方・書き方〜

結論から先にお伝えしますが、失敗しない遺言書を作成するコツは…

作成する目的を明確にし、シンプルな遺言書にする!

これを意識しないで作成した遺言書は、自分の思いがうまく伝わらなかったり、余計なトラブルを誘発したり、せっかく遺した遺言書が無効になってしまったり…といったことが起こる可能性が高くなります。

目的を明確にする

遺言書を作成するには、それぞれ目的があってのことだと思いますが、ネットや書籍などで「遺言書の書き方」を調べているうちに、「こんな場合は…と書きましょう」「こういうことも書いておくと安心です」等といったアドバイスや、紹介されているサンプル文章にばかり注意が向いてしまい、肝心の『自分の目的』がボヤケてしまうことがあります。

ネットや書籍では、情報の発信者によって視点も異なってきます。士業が発信者の場合でも、弁護士であれば、争いになった場合に有利な遺言書にしようと考えますし、税理士であれば、どうすれば相続税を有利に処理できるか…、司法書士であれば、なるべく登記がし易いように…といった具合です。

争い事が心配なのか、節税が大事なのか、手間を掛けずに登記が出来るようにしておきたいのか、勿論全ての視点において完璧なものにしたいと思うのは当然ですが、遺言書を書いておこうと思ったキッカケとなった目的をもう一度思い出して、自分にとっての優先順位を持つことが大切です。

平易な言葉でシンプルに書く

遺言書は、自分の死後、遺産をどのように分けてほしいのかを記載した法的な書類ですが、何も普段使い慣れない難しい言葉を使う必要は全くありません。

読むのは自分が遺産を残したいと考えた相続人であって、取引先というわけでもありませんから難しい言葉でハクを付ける必要もないのです。

箇条書きで出来る限りシンプルに書くことを心がけましょう。書籍やネットの情報に踊らされ、あれもこれもと書き加えて行けば行くほど明確性に欠けたり、内容に矛盾が生じたりしてきます。

また、「遺言執行者を付けましょう…」などという部分だけをみて書き加えても、状況によってはかえって面倒なことになる場合も少なくありません。通販番組を見ておすすめの品を全部買ってしまったというような事は絶対に避けなければいけません。

あらゆるケースを想定して完璧な遺言書をつくるというよりも、明確で矛盾がなく、誰が読んでも遺言者の意思が伝わる、失敗しない遺言書を目指すべきです。

最もシンプルな遺言書

離婚歴があり前妻との間に子がいたが、生まれてすぐに別れたきりでその後の付き合いもなく、財産は全て現在の妻と子に残したいというケースでのシンプル遺言書の例です。

遺言書

私の全財産を妻の山田花子に相続させる。

令和5年9月15日

東京都千代田区千代田1-1 皇居マンション101

山田太郎 ㊞

確かにこれだけでは、前妻の子による遺留分侵害額請求の可能性に対して不十分かもしれませんが、「そうなったらその時考える」というスタンスで、遺言書をつくる目的である「妻に全財産を相続させたい」という内容の遺言書を失敗なく法的に有効な書類として作成しておくことを最優先に考えるべきです。

より完璧を求めるなら専門家に

相続人の中に、手続に非協力的なことが予測できる人がいる場合や、「遺留分侵害額請求の可能性をどこまで考えてどう判断するか?」「そもそも前妻の子に相続の発生を知らせないことはできないか?」「不動産がある場合に遺言書だけで移転登記できるようにできないか?」…等々

今回の事例ですと、本来であれば上記のような点についても検討した上で作成できればベターですが、ネットや書籍の断片的な情報を寄せ集めたにわか知識で作成すると、遺言書そのものが無効になったり自分の思いとは異なった状況になってしまうというリスクがありますので、そのような場合はやはり一度専門家に相談したほうが良いでしょう。

公共機関や士業団体主催の無料相談などを利用してもよいかと想います。個々の具体的な内容まで対応してもらえないとしても、自分の目的を達成すには報酬を払ってまで専門家に相談した方が良いのかどうかを判断する参考にはなると思います。