知っているようで、実はよく知らない「戸籍」

戸籍を極める

戸籍を極める 第1回

遺言書の作成時や相続の発生時に必ずと言ってよいほど出てくる『戸籍』

『戸籍』という言葉を知らない人いないと思いますが、実際に戸籍をじっくり読んだことのある人は、そう多く無いと思います。

住民票と違って、日常生活の中で戸籍を必要とする手続きというのはそれほどありませんし、何らかの手続きで戸籍の提出を求められ取得したことがある人でも、ざっと眺めただけで直ぐに提出先に出してしまったという人がほとんどではないでしょうか。

実際に、相続の手続きを行うために「被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めます」というと、「えっ!集めるってどういうこと、戸籍って一人につきひとつ(一通)じゃないの?」とおっしゃる方がいらっしゃいます。

当たり前のように言ったり聞いたりする『戸籍』という言葉ですが、実際の戸籍は書式も込み入っていて、ぱっと見ただけでは何が書いてあるのかよくわからなということもあって、戸籍を正しく理解している人は少ないようです。

こうした現状を鑑み、今後何回かに分けて『戸籍』について、雑学的なものも含めて書いてみたいと思います。

 戸籍にはどんなことが書かれていて、どのような種類があるのか?
 日本の戸籍が、どのような変遷を辿ってきたのか?

当ブログでも、過去に戸籍について触れた記事がいくつかあるので、重複する内容も出てくるかもしれませんが、改めて「戸籍を極める」というタグを付けて記事にして行く予定です。

戸籍とは?

法務省のホームページによると、『戸籍・戸籍制度』について以下のように説明されています。

戸籍は,人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので,日本国民について編製され,日本国籍をも公証する唯一の制度です。戸籍事務は,市区町村において処理されますが,戸籍事務が,全国統一的に適正かつ円滑に処理されるよう国(法務局長・地方法務局長)が助言・勧告・指示等を行っています。

法務省HP「戸籍」

戸籍制度は、日本国民の国籍とその親族的身分関係(夫婦、親子、兄弟姉妹等)を戸籍簿に登録し、これを公証する制度です。また、人の身分関係の形成(婚姻、離婚、縁組、離縁等)に関与する制度でもあります

法務省HP「戸籍のABC」

更に、ウィキーペディアでは

戸籍(こせき)とは、戸(こ/へ)と呼ばれる家族集団単位で国民を登録する目的で作成される公文書である。

Wikipedia「戸籍」

わかったような、わからないような…

とりあえず、「一人ひとりの出生から死亡までの身分上の出来事を記録した履歴書のようなもの」といった程度の理解でいいと思います。

日本人(日本国籍を有した人)である以上、必ず戸籍があり戸籍のある場所を『本籍・本籍地』といいます。そして戸籍には、人の一生のサイクルを追って以下のような事柄が登録されます。

  1. 出生
  2. 結婚・離婚
  3. 子の誕生(養親子関係に関する事項)
  4. 死亡

最初は『出生』によって親の戸籍に入ります。次いで結婚をすると親の戸籍を出て新しく夫婦の戸籍が作られます。(単身でも親の戸籍を出て新たに作ることも出来ます(これを分籍といいます))そして子供が生まれれば、その子は夫婦の戸籍に追加されて、その子が結婚すれば夫婦の戸籍から出て新しい戸籍が作られ……という流れが続いてゆくことになります。

このように、現在の戸籍は、原則として1組の夫婦及びその夫婦と同じ氏の未婚の子を単位として作られているので、戸籍によって、親子、夫婦、兄弟姉妹といった親族関係を証明することができるのです。

戸籍の管轄(どこに請求するのか?)

戸籍は、国が本籍地を所轄する各市区町村長に対し事務を委託しているので、戸籍の正本は市区町村役場に備えられています。このため対象とする人の本籍地の市区町村役場へ請求することとなります。

因みに、戸籍は正本と副本があり、正本は前述したとおり本籍地の市区町村役場にありますが、副本は、自然災害などで戸籍が焼失したときに備えて法務局で保存されています。

尚、戸籍の証明を請求できる者は法律で以下のように定められています。

  1. 戸籍に記載されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属
  2. 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士が、受任する事務又は事件に関する業務を遂行するために必要がある場合

請求の方法

先ずは、請求対象者の本籍を確認する必要があります。たとえ家族であっても本籍というのは案外うろ覚えであったり、誤解して覚えていたりすることがあるので本籍地記載のある住民票(除票)を取得したうえで請求するのが確実です。

請求の仕方は、直接市区町村役場の窓口へ行く他、郵送で請求することもできます。郵送で請求する場合は、請求先の市区町村役場のホームページから郵送用の請求書をダウンロードし、手数料分の定額小為替(郵便局で購入します)と、請求者の身分証明書のコピーを添付して請求します。

請求時に注意すべき事

請求者が請求対象者の戸籍に記載されている(妻や夫等)場合には必要ありませんが、父母や子等で別戸籍になっている人が請求する場合は、請求対象者との親族関係が分かる資料を請求されますので、請求者自身と請求対象者の名前が記載された戸籍類も用意しておきましょう。

請求書は各市区町村によって書式が多少異なりますが、いづれの場合も請求する証明書の種類をレ点や丸で囲むなどして特定するようになっています。相続手続きで必要な証明書がよくわからない場合は「〇〇〇謄本」と書かれているものすべてをレ点なり丸で囲んでしまいましょう。そのうえで、余白に「相続手続きのため、出生から死亡までの除戸籍全てをお願いします」と書いておきます。

郵送請求の場合、請求先の市区町村の担当者から請求内容について連絡が来ることがあるので、必ず連絡先の電話番号を書いておきましょう。

出生から死亡までの戸籍を請求した場合、複数通の戸籍となる場合が多く料金不足となってしまうことがあります。この場合、市区町村役場から連絡が来て追加の小為替を再送付することになりますが、手間も郵便代も余計にかかってしまうので、できれば戸籍の場合であれば2通分の小為替を一緒に送ってしまった方が良いかもしれません。使用されなかった小為替はちゃんと返してもらえます。

小為替には50円~1,000円までの種類がありますが、購入時に小為替の額面金額にかかわらず1枚辺り200円の手数料がかかります。なので、750円の交付手数料として750円の小為替を購入すると郵便局へは950円支払うことになり、400円と350円の小為替2枚を使うと郵便局への支払いは1,150円(400円+350円+(200円×2))になってしまいます。

請求する市区町村へ多めの小為替を送った場合、使用されなかった分(お釣り)は小為替で返してもらえます。一般家庭では、切手ならともかく定額小為替なんてそうそう使うものじゃないでしょうから、使い道がないかもしれませんが最寄りの郵便局へ行けば現金化してもらえます。(購入時手数料200円は返してもらえません、あくまで小為替の額面金額です)また、小為替には有効期限があるので注意しましょう。

「戸籍を極める」Continue
次回は「戸籍の種類」について書いてみる予定です。