戸籍の種類
戸籍を極める(2)
「戸籍を極める」の第2回目です。
今回は戸籍にはどんな種類があるのかを書いてみたいと思います。
「謄本」と「抄本」
戸籍を請求する際、請求の種類に「戸籍謄本」と「戸籍抄本」があるので、どちらにしたらよいのか迷うことがあるかもしれません。
「戸籍謄本」とは、役所に保管されている戸籍の原本全部(全員が記載された)を写した書面で、
「戸籍抄本」は、戸籍の原本の一部(戸籍に記載された中の特定の個人だけ)を抜粋して写した書面のことです。
相続手続き等で使用する場合、親族関係を明らかにするための資料として取得するわけですから、ここは迷わず「戸籍謄本」を請求する必要があります。
因みに、戸籍は1994(平成6)年の戸籍法一部改正によりコンピュータ化が進められ、コンピュータ化された後の書類は「記載事項証明書」といわれるようになり、それぞれ以下のように呼び名が変わりました。
戸籍謄本 ⇒ 全部事項証明書
戸籍抄本 ⇒ 個人事項証明書
取得した戸籍が謄本なのか抄本なのか迷ったら…
戸籍の写しには、ビジネス文書のように冒頭にわかりやすいタイトルが書かれているわけではないので、ぱっと見「謄本」なのか「抄本」なのか迷うことがあるかもしれません。そのようなときは書類の末尾にある市区町村長の承認文を確認すれば、どのような証明書なのか見分けることが出来ます。
具体的には、以下のような文言が書かれています。
- 戸籍謄本の場合…「この謄本は、戸籍の原本と相違ないことを認証する」
- 戸籍抄本…「この抄本は、戸籍の原本と相違ないことを認証する」
- 全部事項証明書…「これは、戸籍に記録されている事項の全部を証明した書面である」
- 個人事項証明書…「これは、戸籍中の一部の者について記録されている事項の全部を証明した書面である」
現在戸籍
「現在戸籍」とは、現在使用され、在籍している者が存在する戸籍です。
なんだか、表記のまんまという事で説明にもなっていないようですが、これは次にご説明する「除籍」と対比しないと理解し難いかもしれません。
除籍
除籍は「一部除籍」と「全部除籍」に分かれます。
一部除籍とは、婚姻や死亡によって現在の戸籍(現在戸籍)から外れることを言い、全部除籍とは、戸籍を編製していた構成員(現在戸籍に書かれていた人)が全員いなくなってしまった戸籍のことです。
両親と子供一人という家族構成での現在戸籍には「父」「母」「子」の3名が記載されています。この状態で「子」が結婚した場合、その子は親の戸籍から自動的に「除籍」され、新しい戸籍が編製されます。これが一部除籍です。また、父か母のどちらかが亡くなった際も、亡くなった人は除籍となります。これらの事由が重なり、戸籍の構成員全員がその戸籍からいなくなってしまった場合が全部除籍です。
こうして「全部除籍」された戸籍は、「現在戸籍」とは分けられ「除籍簿」という別帳簿で綴られることになります。この除籍簿は、除籍されるまでの期間中の身分関係の変動がすべて記載された重要な戸籍です。
改正原戸籍
戸籍制度は法律の改正や命令により変化し、戸籍の編製方法も変わり書式が新しくなります。(見た目が変わるということです)この時の古い書式の戸籍が改正原戸籍です。
戸籍のコンピュータ化により、それまで縦書きだったものが横書きになりましたが、この場合横書きのものが現在戸籍、縦書きのものが改正原戸籍ということになります。
明治5年に戸籍法が施行されて以来、現在までに5回の改正が行われましたので、その数分の原戸籍が存在することになりますが、相続手続きにおける実務上では昭和32年の制度変更に伴う改正と平成6年のコンピュータ化による改正が影響してくるでしょう。平成6年以前に生まれた場合は最低でも1つ、昭和32年前に生まれた場合は2つの改正原戸籍を取得することになります。
戸籍の附票
戸籍の附票とは、住所(住民票)の移り変わりを記録したもので、通常の相続手続きではあまり必要になることはありませんが、音信不通で連絡先のわからない相続人がいる場合などの調査をする際等に活用されます。
コンピュータ化前と後の違い
戸籍は改製により記載内容や書式が変化していますが、見た目上で最も大きく変化したのがコンピュータ化の前と後で、コンピュータ化前の戸籍は縦書きによる手書き文字であったものが、コンピュータ化後は横書きの活字になりました。
古い戸籍になると、毛筆による達筆すぎる?草書体で書かれているため、判読するのに苦労しますがコンピュータ化によりこうした苦労は無くなりました。
コンピュータ化前の古い戸籍の判読を難しくしている理由は、達筆すぎる手書き文字という他に、市区町村から発行される写しは縮小(B4判⇒A4判)されているため字が潰れて読めなかったり、日付が縦書きの漢数字で書かれているため直観的に分かり難いという点が挙げられます。
相続手続きにおいても、兄弟姉妹が相続人になるような場合は祖父母までの戸籍が必要になったりしますが、そうなると変体仮名、くずし字などで益々判読に苦労することになります。
「戸籍を極める」Continue
次回は「戸籍にはどんなことが記載されているのか」について書いてみる予定です。