同居で親の介護をしてきたらその分遺産は多くもらえる?

夫に先立たれた母親が亡くなり、相続人が長男、長女、次男の3人であった場合で、数年前より認知症の症状が出てきた母を長女が引き取り療養看護をしていたとします。

長女にしてみれば、長年介護してきた自分は、めったに顔も見せなかった長男や次男よりも多くの遺産をもらって当然だと考えています。

ここで、長男も次男も「もっともだ」と納得してくれれば何の問題もなく遺産分割協議が整うのですが…
世の中そうすんなりと行かないケースもあって

「俺たちだって、盆暮れには顔を出して親孝行してきたし、お前(長女)は母の年金も使っていたのだから、むしろ俺たちよりも少なくて当然だ」と長男は主張しています。

寄与分という特別の取り分

民法には相続分について『寄与分』という考え方があって、相続分とは別に、被相続人の財産の維持、増加に貢献した人に「寄与分」という特別の取り分を認めています(第904条の2)。

寄与分とは、相続財産から特別に先取りを認める制度で、寄与分として認められた財産は最初に相続財産から除外され、残った財産を相続分に従って相続人が相続することになります。

具体的には、遺産が1000万円だったとして長女に100万円の寄与分が認められると、先ず長女が寄与分の100万円を先取りし、残った900万円を長女、長男、次男の3人で分割することになり、結果として以下のようになります。

長男…300万円(900万円の法定相続分)

次男…300万円(900万円の法定相続分)

長女…400万円(900万円の法定相続分+寄与分の100万円)

民法第904条の2(寄与分)

  1. 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする
  2. 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは家庭裁判所は同項に規定する寄与をした者の請求により寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める
  3. 寄与分は被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない
  4. 第二項の請求は第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる

寄与分が認められるには

条文にもあるように、寄与分が認められるには被相続人の財産の維持・増加に「特別の寄与」をした人で、現実的には単に親の介護をしたという程度では寄与分として認められる可能性はほとんどありません。

特別な寄与というのは、母親の年金には一切手を付けず衣食の面倒を見てきたとか、介護に必要なリフォーム代を負担したというように、具体的に母親の財産の維持・増加が認められる必要がありますので、領収書などの客観的資料も必要になってきます。

結論として

寄与分が認められるには思った以上にハードルが高いうえ、実際に認められた場合においても期待するほど高額になることはほとんどないというのが現実です。

相続税が発生するようなケースですと、寄与分でモメていたために納税申告期限が過ぎてしまったというようなことにでもなれば、税金面での損失の方が大きくなってしまう可能性もあります。

感情論や自分の都合を優先してモメるより話し合いで早期解決することが、今後のためにも望ましいといえるでしょうね。

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