公正証書遺言の検索システム
亡くなった母から「遺言書を作って公証役場に預けてあるから…」と聞いていたが、その場で「いつ、どこの公証役場へ…」と根掘り葉掘り聞くのも躊躇われてそのままにしてしまい、いざその時になって仏壇の引出やら何やら色々探したけど、それらしい手掛かりは見つけられず「いったい、書き残した遺言書はどこにあるのだろう?」というケースがあります。
特に遺産分割でもめるようなこともなく、遺言書が無くて実務上困るということもないという場合でも、「母の最期の意思はどんなものだったのだろうか?」と、知りたくなるのが人情です。
このような場合、残された遺言書が『公正証書遺言書』であれば、『遺言検索システム』を利用して確認することが出来ます。
『遺言検索システム』とは?
遺言検索システムとは、平成元年以降に作成された遺言書をデーターベース化して、全国どこの公証役場からでも検索できるようにされたものです。
遺言者の住所・氏名・生年月日等が登録されているので、いつどこの公証役場で作成されたかわからない場合でも、近くの公証役場で遺言書の有無や保管されている公証役場を調べることが出来ます。
このシステムで遺言書の中身までは知ることはできませんが、作成された公証役場が分かればそこに請求することで内容を確認することが出来ます。
遺言検索ができる人
推定相続人、受遺者、遺言執行者などの利害関係人およびその代理人です。因みに、遺言者が生存している場合には、遺言者本人以外は検索・謄本の請求はできません。
料金
遺言検索システムによる検索自体は無料です。
遺言書の原本を閲覧する場合は200円、遺言書の謄本交付をする場合は、遺言書のページ数×250円の手数料がかかります。
また、謄本の請求は郵送で行うことも出来ますが、その際は認証手数料として別途2,500円が必要になります。
遺言検索に必要となる書類
- 遺言者の死亡の事実を証明する書類
(遺言者の死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本または死亡診断書のコピーなど) - 請求者が利害関係人であることを証明する書類
(亡くなった方の相続人であることが確認できる戸籍謄本等) - 請求者の身分を証明する書類等
(発行から3か月以内の印鑑証明書および実印、または免許証などの写真付き本人確認書類および認印など)
公正証書遺言謄本の交付を郵送で行う場合
遺言検索システムにより遺言書の存在が確認でき、保管されている公証役場が判明すればその公証役場へ出向けば遺言書の謄本交付を請求することが出来ますが、判明した公証役場が遠方である等の利用で郵送請求をしたい場合もあると思います。
以前は公証役場の窓口で請求するしか方法がありませんでしたが、平成31年4月1日から、遠隔地の公証役場が保管する遺言公正証書等の正本または謄本を郵送で取得することができるようになりました。
ただし、住民票の郵送請求のように、請求の手続きに関して詳細に案内されておらず、申請書のダウンロード等ができるわけではありません。
請求先の日本公証人連合会のホームページにおいても、郵送請求に関しては「詳しい手続きは、最寄りの公証役場にご相談してください。」としか案内されていませんので、遺言検索システムを利用した際に、その場で郵送請求をしたい旨を伝えて手続きについて確認しておく必要があります。具体的には、ここで郵送請求に必要な「公正証書謄本交付申請書」を作成してもらい、手数料として2,500円を支払うことになります。
公正証書遺言を作成したら…
生前に遺言の内容を詳しく知らせたくないとお考えになるケースもあると思われますが、将来のことを考えると、少なくとも「いつ、どこの公証役場で作成した遺言書がある」というメッセージだけは伝えておくと共に、それらを記録したメモを遺族が発見しやすい場所に残しておくようにしましょう。
せっかく残した遺言書も、誰にも発見されずというのでは意味がありません。
自筆遺言書保管制度を利用するとい手も
法務局の『自筆証書遺言書保管制度』を利用することにより、あらかじめ指定した1名に対して、遺言書が保管されている旨の通知をしてもらうことが出来ます。
弊所では、遺言書をもっと身近なものにしていただくことを目的に『自筆遺言書作成サポート』を行っています。