先ずは「遺言書」の存在(有無)を確認
葬儀を済ませ、保険や年金といった誰もが必ず行うべき公的手続を一通り終え、個別具体的な相続手続きを行うにあたり、まず最初に行うべきことは、故人が「遺言書」を残しているかどうかを確認することです。
遺言書の有無により今後行うべき手続にも違いが出てきますし、手続きを進めた後で遺言書が見つかった場合、すでに済ませた遺産分割協議をもう一度やり直すことになってしまうことも考えられます。
相続が発生したら、まずは手続きを進める前に遺言書を探すことが大切です。何より故人の遺志を知ることは遺族としての”義務”といっても過言ではないでしょう。
「遺言書なんて無い」と決めつけない
生前、遺言書の存在や所在を故人から聞いてあれば問題ありませんが、「遺言書を書いたことは聞いていたが、具体的にどこにあるかは聞いていなかった」というケースや、そもそも故人が遺言書を書いたこと自体を誰にも知らせていないケースも多々あります。
例え遺言書について何も聞かされていなかった場合でも、「あの人は遺言書なんて書くような人ではなかった…」などと決めつけず、先ずは心当たりを一通り確認してみましょう。
遺言書の隠し場所
遺言書の場合「隠す」といっても、自分が生きている間は見られたくないという心理が働き、誰にも言わずに隠しておいたとしても、最終的には誰かに発見してもらいたいと考えているものですから、簡単には見つからないけれど、自分の死後には発見されるような場所なはずです。
へそくりのように「絶対見つからないところ」と考えて隠すことはないので、とんでもなく奇抜な場所へ隠すということはないでしょう。
一般的には、
- 本人の使っていた引き出し
- 手提金庫
- 仏壇もしくは神棚
などが多いといわれています。
弁護士や税理士、行政書士に預けている場合も
自営業等で、顧問契約をしている弁護士や税理士、社労士、定期的に許認可や役所への提出書類の作成依頼をしている行政書士がいる場合には、それらの専門家に預けている可能性もあるので、生前のお礼を兼ねて相続が発生した旨を伝えましょう。もし遺言書を預かっているようであれば、その旨を言ってくれるはずです。
公証役場に保管されている場合
公正証書で遺言書を作成している場合は、遺族にも知らせているケースが多いと思われますので、保管先の公証役場へ連絡すれば必要な書類や手続きについて教えてもらえます。
仮に「遺言書をつくって公証役場に預けている」ということは知らされていたけど、具体的にどこの公証役場かわからないといった場合であっても、最寄りの公証役場へ行ってその旨を伝えれば、全国の公証役場を対象に遺言書の存在を調べてもらうことができます。
法務局に保管されている場合
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して、法務局で保管している場合も、公証役場で保管しているケースと同様で遺族には知らせている場合が多いでしょう。
また、明確には知らされていないが「何となく、それらしいことを言っていたな」という心当たりがあるようでしたら、公証役場にしても法務局にしても、存在の有無は最寄りの窓口で確認できますので先ずは一度電話で問い合わせてみましょう。
銀行の貸金庫に保管されている場合
こういう言い方は適切ではないかもしれませんが、このケースはちょっと厄介です。
何が厄介化というと、貸金庫を開けるには原則相続人全員の立会いが必要となってしまいます。相続人が複数いる場合や遠方の場合は同意書で対応することも出来ますが、銀行によって対応がマチマチで、その場(銀行)では内容物の確認はさせてもらえるものの、中身(遺言書)を持ち帰るには相続人全員の立会いを求めてくる銀行もあります。
また、相続が発生したことを銀行側が知った段階で、その銀行にある故人の口座は凍結(キャッシュカードでの引き出しや、口座引き落としが出来なくなる)されてしまうので、その辺りのことも留意しておく必要があります。
自筆遺言書の場合
法務局で保管されていた自筆証書遺言書以外の自筆遺言書の場合、相続手続きに使用するには家庭裁判所による検認手続きが必要なります。
この検認の手続きは、検認の申立てをしたからといって直ぐに対応してもらえるわけではなく数カ月先になることもありますし、申立てに必要な戸籍類の収集も場合によってはかなり複雑で面倒な作業になるので、相続財産の種類が多い場合や相続人が複雑で多くなるような場合には、相続手続きも含めて事前に専門家に相談してみることを検討しましょう。