争族の火種は資産金額の多寡ではない
大した資産もないので『争族』には無縁だと思っているあなたに伝えたい現実
遺産相続をめぐって親族が争いになることを俗に『争族』などといいますが、こうした争族はそもそも、不動産や株などで数千万から億の単位の資産のある一部富裕層だけのものだと考えていませんか。
数十億の資産をまえに突然隠し子が名乗り出てきて、相続人間で骨肉の争いが起き殺人事件に発展して…といったようなドラマのシーンを思い浮かべているのでしょうが、現実はだいぶ違います。
令和2年度の司法統計年報をみると、遺産相続(分割)に関して家庭裁判所が取り扱った調停事件の34.7%は相続金額1000万円以下であるのに対し、資産が1億円を超えるのは僅か7%に過ぎません。
どこまでの資産が一般的家庭と呼ぶかは各々異なるでしょうが、仮に「自宅は持ち家だけど特に目立った金融資産はない」という層までとし、自宅不動産の資産を加味して5000万円以下とした場合、相続人間で話し合いが付かず裁判所に持ち込まれる『争族』の8割弱が一般的家庭ということになります。
『遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(「分割をしない」を除く) 遺産の内容別遺産の価額別 全家庭裁判所』
資産の額 | 件数 |
1000万円以下 | 2017 |
5000万円以下 | 2492 |
1億円以下 | 655 |
5億円以下 | 369 |
5億円を超える | 37 |
算定不能・不詳 | 237 |
総数 | 5807 |
相続は金銭的な損得だけでないからやっかい
争族に発展してしまう理由にはいろいろなケースが考えられますが、少なくとも「たいした遺産もないから大丈夫」という金額の多寡だけで判断してはいけないということです。
相続の場合、何か買い物をするときのような「どちらが安いか」といった金額的な損得だけなく、そこには故人への感情や想いといったものが大きなウエイトを占めています。
特に「我が家は家族みんな仲が良いので相続で争うようなことはない」と考えている人も多いかと思いますが、あなたと相続人一人一人の間の特別な事情を他の相続人が互いに全て理解しているとは限りません。
また、きっちり均等に分ければ争いになることはないというものでもありません。
自筆でよいので遺言書を残しておく
遺言書があれば絶対に争いにならないということではありませんが、相続分に関して自分の気持ちを残すことができます。
遺言書には具体的な相続分の指定だけでなく、付言としてどのような理由で相続分を割り当てたかという気持ちを書いておくこともできます。
付言には法的効力はありませんが、少なくとも残された遺族は故人の意思を踏まえた判断ができます。相続で争いが生じてしまった場合の多くは「なぜ、このような相続割合になるんだ!おかしいだろ!!」といった感情の部分が発端で、この部分に納得感を得られれば『争族』に発展することもなかったであろうと思われる事例が多くあります。
資産の多寡にかかわらず、「自分の気持ちを伝える」という意味で、遺言書を残しておくことは大切です。
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