エンディングノートは遺言書の代わりになるか?

エンディングノートという言葉もすっかり定着し、書店や文具店などでも多くの種類が売られているのを見かけます。見た目もオシャレなものが多く価格的にも手を出しやすいこともあって、エンディングノートを遺言書の代わりとして残しているという方もいるようです。

そこで、「エンディングノートは遺言書の代わりになるのか?」ということですが…

結論から言ってしまうと
「エンディングノートは遺言書の代わりにはなりません」

ならないけれども
「遺言書に書けないようなことも書いておける頼りになるやつ」

遺言書とエンディングノートの決定的な違い

自分の意思や希望を書き残しておくという意味では、遺言書もエンディングノートも役割は同じですが、決定的に異なるのは法的な効力があるかないかという点です。

例えば、エンディングノートに「財産はすべて妻に相続させる」という希望を書き残しておいても、エンディングノートで不動産の所有権移転登記や預貯金の払い戻しをすることはできず、相続人全員による遺産分割協議書を作成しなければなりません。

対して有効な遺言書であれば、遺産分割協議を経ることなく遺言書を基に手続きを行うことができます。

とはいえ、遺言書に書いたことすべてが法的に効力を持つわけではなく、法定遺言事項としてどのようなことが効力を持つのか定められています。

主な法定遺言事項

法定遺言事項は大きく分けると「財産関係」と「身分関係」になり、具体的には以下のような事項です。

・相続分の指定(民法902条)
・遺産分割の指定または禁止(民法908条)
・生命保険受取人変更(保険法44条)
・推定相続人の廃除(民法893条)
・子の認知(民法781条)
・未成年後見人の指定(民法839条)
・祭祀(さいし)主宰者の指定(民法897条)

法定遺言事項以外のことを書いてもかまわない

尚、遺言書には上記のような法定遺言事項しか書いてはいけないという決まりはありません。単に法的効力が及ばないというだけで何を書いても自由です。

自由ですが…

心情や思い出などを赤裸々に数ページに及んで書き記すというのも現実的ではありませんので、そのような場合は別途エンディングノートを併用するのが良いでしょう。

それぞれの役割

遺言書は自分の遺志を死後に法律の力で実現するためのであるのに対し、エンディングノートは死後のことだけでなく、延命治療や認知力が低下した際の希望など生前のことや、葬儀の仕方など遺された人たちに役立つ情報になります。

今回は「法的効果の有無」といった視点から、「エンディングノートは遺言書の代わりにはならない」と結論付けましたが、それぞれに長所がありますので、自分がどのような目的で作成するのかを明確にすることが大切です。

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