「遺言・相続」と「民法」
わたしたちを取り巻く社会には守らなければならない決まり(ルール)が数多く存在し、そうした決まり(ルール)の親玉のような存在として『法律』があります。また、一口に法律といっても2,000種類ほどありますが、日常生活の中で最も身近な存在が『民法』ではないでしょうか。
相続や遺言に関しても、『相続法』『遺言法』といった単体の法律があるわけではなく、相続や遺言については民法の第5編で規定されています。
実際に遺言書を作成するとか、相続が発生したからといって、一般の方が法律の条文一つ一つを理解して実践するというのも現実的にはかなり困難を伴います。
とはいえ、どういったことが法律として規定されているのかといった全体像は把握しておいた方が、専門家に相談する際にも理解しやすくなると思います。
そこで、今回は『民法』の中の相続や遺言に関する部分の全体像を書いてみたいと思います。
民法の全体像
民法は『編』『章』『節』『款』という構成で成り立ち、相続に関しては第五編に規定されています。
- 第一編 総則
- 第二編 物権
- 第三編 債権
- 第四編 親族
- 第五編 相続
第五編 相続
第五編 相続は、10章で構成され、第882条から第1050条までになります。中には削除された条文もありますが、それでも約160条強の規定があるという事です。
- 第1章総則
- 第2章相続人
- 第3章相続の効力
- 第4章相続の承認及び放棄
- 第5章財産分離
- 第6章相続人の不存在
- 第7章遺言
- 第8章配偶者の居住の権利
- 第9章遺留分
- 第10章特別の寄与
民法で法律行為として認められる遺言事項
- 相続分の指定又は指定の委託(902条1項)
- 推定相続人の廃除、廃除の取消(893条、894条2項)
- 遺産の分割方法の指定(908条 前段)
- 遺産分割の禁止(908条 後段)
- 相続人相互の担保責任の指定(914条)
- 遺贈(964条)、遺贈義務者による目的物等の引き渡し方法の指定(998条ただし書)
- 遺留分侵害額の負担者の指定(1047条1項2号ただし書)
- 遺言執行者の指定(1006条)
- 特定財産に関する遺言の執行方法の指定(1014条4項)
- 受遺者又は受贈者の負担方法の指定(1047条1項2号)
- 子の認知(民法第781条2項)
- 未成年後見人の指定(839条)、未成年後見監督人の指定(848条)
- 配偶者居住権の遺贈(1028条1項2号)、存続期間の指定(1030条)
また、条文の中で「遺言で」と規定されてはいないものの、①祭祀主宰者の指定(897条1項ただし書)、②特別受益者の相続分に関する意思表示(903条3項)についても、遺言で有効にすることができると解されています。
まとめ
今回は相続・遺言について、民法の全体像をお伝えしましたが、実務では他にも関連する法規があります。相続や遺言書の作成といったことは、人生においてそう度々直面する出来事ではありませんので、これらの決まり(ルール)を逐一確認し理解することはできないことだと思います。
そもそも、法律の条文というのは独特の言い回しで、一度読んだだけでは何を言っているのかわからないという条文も多くあります。
今の時代、何でもネットで調べられる時代ですが、ネット上には誤った情報や誤解を生じさせる情報も多く存在しているのが実情です。相続や遺言書作成といった、人生の内でも数少ないながらも重大な問題に対するのであれば、やはりしっかりとした専門家に相談されることを強くお勧めします。
各士業の団体が無料相談会を実施ていますので、そういった場で確認してみるのもよいと思います。
神奈川県行政書士会でも毎月無料相談会を実施しています。日程などの詳細は神奈川県行政書士会ホームページの「お知らせ」にて告知されています。
今回は各条文の詳細についての説明は省きましたが、気になる条文がある方は以下のサイトで確認してみてください。