「相続させる」と「遺贈する」の違い

遺言により、特定の法定相続人に特定の財産を取得させようとする場合、「相続させる」と書くのと、「遺贈する」と書くのでは財産を取得させるものの範囲、対象不動産の所有権移転登記手続き、放棄の手続きに違いがあります。

相続させる旨の遺言は、法定相続人に対して財産を取得させる場合に限り、法定相続人以外の者に遺言で財産を取得させる場合には、遺贈を選択することになります。

相続させる ⇒ 法定相続人に限る
遺贈する  ⇒ 法定相続人以外

所有権移転手続きの違い

一般的に「相続させる」と「遺贈する」するで大きく異なるのは、不動産の所有権移転登記の手続きの違いで、この場合「相続させる」旨の遺言形式とる方が簡明になります。

具体的には、「自宅不動産甲は妻にAに(相続させる)」とあれば、原則遺産分割方法の指定となり、妻Aは直ちに不動産甲を相続により承継されると認められる(最判H3,4,19)ため、妻Aは単独で所有権移転登記をすることができます。

対して、遺贈の場合ですと、妻Aが移転登記をするには、他の共同相続人と共同で手続きを行う必要があり、万一他の共同相続人の中に非協力的な人がいると手続きが頓挫してしまう事にもなりかねません。

放棄手続きの違い

何らかの理由により、不動産の取得を望まない場合、相続の場合は相続の開始を知ったときから3か月以内に法規の手続き(民法915条の手続き)をとる必要がありますが、遺贈の場合、受遺者は遺言者の死亡後いつでも(民法986条1項)遺贈の放棄をすることができます。(包括遺贈の場合はちょっと異なります)

どちらが良いのか

どちらが良いかは、それぞれの条件によって異なってくるとしか言いようがないのですが、一般的に自宅の不動産だけを特定の(妻や子に)相続させるのであれば、移転登記の簡便さを考慮し「相続させる」とすべきでしょう。「遺贈する」としてしまった場合は、移転登記に手間がかかってしまいます。