遺贈寄付とは?

言葉の意味としての『遺贈寄付』

『遺贈』とは「遺言によって無償で財産を譲渡する」ことで、『寄付』とは「公共事業または社寺などに金銭・物品を贈ること(広辞苑)」ということになっていますので、『遺贈寄付』とは遺言によって寄付をすることになります。

寄付する先はさまざまで、公益法人やNPO法人、学校、図書館、美術館等々遺言者の気持ち次第となりますが、入籍していない事実婚のパートナーや愛人、親しくしていた友人へといった場合には寄付とはいわないので、単に『遺贈』ということになります。

遺贈寄付の種類

実務上の『遺贈寄付』としては、以下のような種類も含めた総称を指します。

  1. 遺言による遺贈寄付
  2. 相続財産からの遺贈寄付
  3. 信託による寄付

『遺言による遺贈寄付』については、前述したとおり遺言により相続人以外の者や団体に無償で贈与することをいうので遺言書の作成が必要になり、エンディングノートでは実現できません。

『相続財産からの遺贈寄付』は、相続人が一旦受け取った財産を寄付することで、この場合はエンディングノート等で相続人に対して寄付して欲しいという意思を伝えておくこともできますが、あくまで寄付するかどうかの判断は相続人に委ねられることになります。

『信託による寄付』は、委託者(財産を預ける人)、受託者(財産を預かる人)、受益者(財産を受け取る人)の三者で『契約』をして寄付するものです。この場合、信託銀行等による金融サービスとしての信託と個人間での契約による民事信託の方法があります。

【それぞれの特徴】

遺言による贈与寄付相続財産からの寄付信託による寄付
遺言書必要不要(エンディングノート等でも可)不要(別途契約が必要)
確実性×(相続人次第)
財産の移転死亡時死亡後契約時
特記金銭のみ(最低金額が決められている場合もある)

これらの他に『生命保険信託による寄付』や、寄附者と寄付を受ける団体等との生前契約によって、寄付者の死後に遺産を寄付する『死因贈与契約』という寄付の方法もあります。

包括遺贈と特定遺贈

『包括遺贈』とは、財産の全て、または財産の一部を一定の割合で示して贈与することで、「〇〇NPO法人へ全ての財産を遺贈する」「××財団法人へ財産の50%を遺贈する」といったように、遺贈する財産を具体的に指定せず割合で指定する方法です。

※詳細は省きますが、包括遺贈の場合遺贈者の負債も承継するリスクが伴うため、受け入れる団体側としても包括遺贈の対応には慎重になるでしょう。

『特定遺贈』とは、「〇〇銀行の預金100万円を〇〇NPO法人へ遺贈する」「東京都千代田区千代田1-1の不動産を××財団法人へ遺贈する」といったように個々の財産を特定して行う方法です。

遺言による寄付を行う場合の注意点

1.遺留分を考慮する

財産すべてを寄付するという遺言も一応有効ですが、遺留分の権利行使ができる法定相続人がいる場合には遺留分を侵害しない範囲での寄付にするなどの配慮が必要です。

2.包括遺贈はなるべく避ける

包括遺贈と特定遺贈のところでも記載しましたが、包括遺贈の場合、寄付を受け付ける団体からすると、遺贈者の債務も承継することになるというリスクが発生することになるので受け入れを拒否される可能性が高くなります。

3.不動産の現物寄付は慎重に

不動産の場合も、包括遺贈同様に遺贈を受ける側からすると「みなし譲渡課税」の問題や、遺贈された不動産の活用、管理、処分に対する負担等もあるため受け入れを拒否される場合も考慮しなければなりません。


これらの点を考慮した場合、最も確実なのは『遺留分を侵害しない範囲の現預金を特定したうえで遺贈する旨の遺言を残す』ことではないでしょうか。