デジタル遺産の準備は万全ですか
『デジタル遺産』という言葉もかなり定着してきましたが、何らかの対策をとっているという方は少ないように思います。
つい最近も、Twitter社のイーロン・マスク氏が、長期間ログインしていない(休眠アカウント)を削除するといった内容のつぶやきをして騒ぎになりましたが、現状ではデジタルデータの相続に関する明確な法律はありません。
ネット銀行やネット証券等の金融資産の相続に関しては、リアル(実店舗のある)店舗の場合と実質的にそれほど違いはありませんが、ウェブメールやLINEのやりとり、SNS、ブログ、ホームページ等のデータについては、自分の死後どのように処理してほしいかといった希望をキッチリ残しておいた方が良いでしょう。
ブログやホームページに関しては、個人が趣味で運営しているような場合、ほとんど財産的価値はないと思われますが、「想い出として残しておきたい」といった場合や、逆に「見られたくない、隠しておきたい」といった場合もあるかと思います。
不動産や現預金といったものだけが遺産ではありません。今の時代、誰もがこうしたデジタル遺産を保有していることを忘れず対処しておきたいものです。
何はともかく、IDとパスワード
デジタル遺産で問題となるのは、IDとパスワードです。網羅的に明確な法整備がされていない現状のデジタルデータに関しては、これらが分からなければ手も足も出せない状態になってしまいます。
IDはともかく、パスワードは適時変更する可能性もありますから遺言書に付言として記しておくというのも現実的ではありません。
かといって、誰もが直ぐに目につく場所に掲示しておくようなものでもないので、その扱いは悩ましいところです。
エンディングノートのようなものに書いて、パスワード部分を修正テープで塗りつぶしておくとか、グラビア雑誌にあるような袋綴じの要領で、閲覧の痕跡が分かるような形で残しておくなどといった方法もあるようですが、どのような形で残すかは個々人の環境やデータ自体の秘匿性次第といったところもあるので、各自で最良の方法を考えるしかないと思います。
何れにしても、スマホとパソコンの起動に必要となるパスワードは何らかの方法で遺族に知らせることができる方策を考えておくべきでしょう。
パスワードについて
ちょっと余談になりますが、パスワードの設定について。
同じパスワードを使い回すことの危険は随所で言われていることですが、あらゆるパスワードを一つか二つで管理しているという人は非常に多い印象を持っています。
現実問題として、それぞれのサービス毎に異なったパスワードを暗記しておくというのはそもそも(普通は)不可能ですから、パスワードを頭の中だけで暗記しておこうと思えば、これはやむを得ないことでしょう。
しかし、パスワードを解読されて大きな被害にあうケースの殆どが、共通したパスワードを設定していた場合のようで、最も効果的なパスワード管理は、昔も今も全て異なるパスワードを設定することです。
各サービス毎全てに異なるパスワードを設定し、それらを記した一覧表を金庫にしまう、またはパスワードを設定した電子ファイルにしておきます。頭で覚えておくのは金庫のダイヤル番号、またはファイルのパスワード一つにします。一つくらいなら(普通は)暗記しておくことも無理ではないでしょう。
とはいえ、そもそも(普通は)家に金庫なんてないでしょうし、出先で確認しなければならないパスワードもあるでしょうから、現実問題としては、一覧表にした電子ファイルをパスワードをかけてスマホに入れておくという運用になるかと思います。
ここで、「全てのパスワードを書いたものが漏洩、盗難にあったらどうするんだ、そちらの方がよっぽどリスクが高いんじゃないか」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、実際この一覧表もしくはファイルが漏洩するリスクと、全てのキャッシュカード、クレジットカードで同じパスワードを設定していた場合のリスクを考えると、私としては断然後者の同じパスワードを設定していた場合のリスクの方が大きいと思っています。
因みに、パスワードを記したファイルに「パスワード一覧」なんて名前を付けたらダメですよ(^^;
ありふれた名前を付けてドキュメントフォルダーに雑多なファイルと一緒に入れておくのが一番です。