婿養子が亡くなった場合の相続

「婿養子」と聞くとサザエさん一家のマスオさんを思い浮かべる人も多いと思いますが、マスオさんは婿養子ではありません。
サザエさん、マスオさん、タラちゃんは「フグ田」という名字で、波平さん、フネさん、カツオ、ワカメは「磯野」という名字という設定ですから、マスオさんはあくまでフグ田家の戸籍筆頭者であり、波平さん達と同居しているに過ぎないということになりますね。

というわけで、サザエさん一家の世帯構成はともかく、「婿養子」とは、結婚した際に妻の親と養子縁組を結び、妻の氏となった男性をいいます。

今回はこの婿養子が亡くなった場合の相続についての話ですが、子どもがいる場合は特に婿養子だからといって変わるところはなく、配偶者と子どもが相続人になるだけなので、ここでは子どもがいいないケースとしての話になります。

養子縁組した場合の親子関係

そもそも養子縁組とは、血縁関係のない者同士に親子関係を成立させるもので、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類がありますが、特別養子縁組はこどもの利益のために特に必要がある場合に限り、家庭裁判所の手続により成立するもので婿養子に用いられる制度ではありませんので、婿養子=普通養子縁組ということになります。

特別養子縁組の場合は実親との縁はきれますが、普通養子縁組の場合、縁組後も実親子関係は存続します。

【ここポイント】

養子縁組が成立し、新たな親子関係が成立すると、それ以前の親子関係は消滅すると勘違いされている方もいるようですが、普通養子縁組では「縁組後も元の親子関係は存続したまま」となります。

つまり、養子縁組された方には、実親と縁組後の親という二組の親がいることになります。

養親、実親の両方が存命の場合

養子縁組をしても、実親との親子関係が消滅するわけではないことから、養子縁組をした両親だけでなく、実の両親も相続人となり相続割合は、配偶者が3分の2、4人の親がそれぞれ12分の1となります。

相続財産が1500万の場合ですと、具体的な相続金額は以下の通りです。

配偶者3分の21000万円
義理の父12分の1125万円
義理の父12分の1125万円
実の父12分の1125万円
実の母12分の1125万円

尚、普通養子縁組による婿養子の縁組は、義父又義母の一方とだけ縁組することもできますが、その場合には縁組をした片方の親だけが相続人となります。

養親、実親の両方が亡くなっている場合

今回の事例では「子どもがいない」という前提ですので、兄弟姉妹が相続人となりますが、この場合も養子先の兄弟と実の兄弟の両方が相続人となりまります。配偶者に兄が1人、妹が1人、自身に姉が1人、弟が1人いた場合、配偶者が4分の3、4人の兄弟姉妹がそれぞれ16分の1を相続することになります。

相続財産が1500万の場合ですと、具体的な相続金額は以下の通りです。

配偶者4分の31125万円
義理の兄16分の193万7500円
義理の妹16分の193万7500円
実の姉16分の193万7500円
実の弟16分の193万7500円

婿養子が相続人となる場合

婿養子が亡くなった場合についての相続人について説明しましたが、逆に親が亡くなり婿養子として相続人となる場合も「縁組後も元の親子関係は存続したまま」という原則に則り、養子先の両親の相続人となるだけでなく、実親の相続人でもあるということです。