お墓の相続について
「盆暮れ正月」という言葉があります。お盆の季節と年末、お正月を列挙した語で、帰郷して家族と過ごす期間などを指す際に使われます。
お盆は地方によっても異なりますが、今週いっぱいお盆休みということで、まさにお盆休み真っ只中という方も多いのではないでしょうか?
連日の猛暑でお墓の中もサウナ状態でしょうから、エアコンの効いた自宅にご先祖様をお迎えし、家族といっしょに過ごしてもらいましょう。
今回は、お墓の相続について法的な側面から少し書いてみたいと思います。
お墓は誰が相続するの?
民法には「法定相続分」といって、相続財産について相続順位や割合が決められています。法律で決まっているからと言って必ず法律通りに分ける必要もなく遺言書があったり、相続人全員が合意できればその内容に従うこともできるので、法律はあくまで目安や一定の基準ということになります。
では、お墓や仏壇仏具といったものも、この「法定相続分」に定められた順位や分け方が目安や基準になるのかというと、ちょっと違っていて、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」としたうえで、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。」とし、系譜、祭具及び墳墓(お墓や仏具など)については、相続財産とは別の定めをしています。
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。(祭祀に関する権利の承継)
民法
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
上記参照条文の897条を砕いて言いうと、お墓や仏壇仏具といった類のものは、「法定相続分」として定められた「相続財産」とは別に、以下の順序で相続するとしています。
- 被相続人(亡くなった方)が遺言書で指定した者
- 慣習
- 家庭裁判所の判断
1.の「遺言書で指定した者」については、法律上祭祀の指定方法までは言及されていないので、遺言書でなく口頭などでも良いことになりますが、現実問題としては遺言書など証拠になるものがないと決め難いでしょう。
さらに厄介なのが、2.の「慣習」で、「村八分」などといった言葉が使われていた時代とは異なり、現代社会において祭祀についての慣習といわれてもなかなか難しいのが現実でしょう。
相続人間で祭祀が決まらない場合、最終的には家庭裁判所が決めることになりますが、明確な判断基準があるわけではなく、諸々の事情を考慮して決められるわけで、法定相続人ではない、内縁関係にあった配偶者が指定されたという判例もあります。
遺言書で祭祀指定しておこう!
いずれにしても、「お墓をだれが引き継ぐのか」とう問題は、金銭類の相続とはまた違った側面を持った特殊性があり、この点で揉めてしまうと場合によっては金銭以上に相続人間に遺恨を残す結果となってしまうこともあるので、お墓の相続について心配のある方は祭祀指定を含めた遺言書を作成しておきましょう。
実際の記載例としては、下記のような簡単な文言でかまいません。
「遺言者○○ ○○は、祭祀を主催する者として、遺言者の長男△△ △△(昭和✕年✕月✕日生)を指定する。」
また、場合によっては祭祀にかかる負担を考慮して下記のような一文を加えておくことも検討しておきましょう。
「長男△△ △△には祭祀を主催するにあたって必要な費用に充てるものとして、□□銀行の預金をを相続させる。」