自筆証書遺言書における財産目録作成時の注意点

パソコンの前で✕印をする女性

相続法(民法)改正により、自筆証書遺言書においても財産目録については遺言者が自筆することを要せず、パソコン等による作成、遺言者以外の者による代筆、不動産の登記事項証明書や預貯金の通帳コピー等を添付する方法が認められました。

前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

民法968条の2

これにより、財産目録をパソコンで作成される方も多いと思われますが、自筆せずとも認められるのはあくまで「財産を特定するための情報」に限られているので、遺言本文の自筆部分を簡略化させようとして、目録の項目に「誰が相続するか」を記載したとしても、その項目部分は無効とされ預貯金の解約手続きなどでは手続に応じてくれないと考えられます。

具体的には以下のような遺言書です。

自筆による遺言本文への記載

1条 預貯金は別紙財産目録に記載の通り相続させる

別紙財産目録

金融機関支店科目口座番号相続人
◯◯銀行XX◯支店普通123456妻 山田花子
◯銀行X◯支店普通789123長男 山田一
X◯◯銀行XX支店普通456789次男 山田二郎
コンピュータで作成後印刷した別紙

このような遺言書の場合、「相続人」の項目は無効と解されます。誰がその財産を承継するかという遺言の基本的な事項については、目録ではなく本文中に自筆する必要があります。

上記の例でであれば、財産目録中の「相続人」の項目は削除し、本文中に自筆で目録に記載の財産を誰が承継するかを個別に記載する必要があります。

以下が訂正後の遺言本文と別紙財産目録の例です。

▼訂正後の自筆による遺言本文への記載

1条 別紙財産目録1号の預金は妻山田花子に相続させる。

2条 別紙財産目録2号の預金は長男山田一郎に相続させる。

3条 別紙財産目録3号の預金は次男山田二郎に相続させる。

別紙財産目録

金融機関支店科目口座番号
◯◯銀行XX◯支店普通123456
◯銀行X◯支店普通789123
X◯◯銀行XX支店普通456789
コンピュータで作成後印刷した別紙

一行で済ませた記述が三行に増えてしまいました。自筆部分が多くなるほど、ちょっとしたミスや誤記の可能性が増えるので、できるだけ簡素に短くまとめたいところですがここは仕方のないところです。