遺言と遺書の違い
「遺言」と「遺書」
あなたは普段の生活において、遺言と遺書を意識的に使い分けていますか?
多くの人が「どちらも同じ」と考えているようです。
一般的な国語的解釈でいえば、死後に残す言葉が「遺言」であり、遺言が記された(紙などの)ものを「遺書」というのかもしれませんが、ここでは法的な意味を踏まえて説明させていただきます。
遺書とは…
遺書とは、死を前提に、自分の気持ちを書き残した手紙のことで、気持ちを伝えることに主眼が置かれます。
実際の場面としては、自殺する人や何らかの理由で死を覚悟した人が書きます。
いってみれば、近しい人への「お別れの言葉」といったニュアンスですね。
遺言とは…
遺言とは、遺産(お金や不動産)の分け方や、大切にしていたもの(骨董美術品やペット)をどうして欲しいかについて記録したもので、自分の死後に発生する権利義務についての希望を伝えることに主眼が置かれます。
権利義務について記すわけですから、死の直前や認知に問題がある状態では書くことが出来ません。
遺書と同様に「気持ち」が書かれることもありますが、あくまで主眼は権利義務を法的効力を持つ形で残すことです。
「遺言を書いて」と言われたら…
長年連れ添った配偶者や、お子さんから
「今後のこともあるから、今のうちに遺言を書いておいたらどう?」
と言われたとします。
さて、あなたはどんな気持ちがしますか?
多くの人は、あまり気持ちの良いものとは感じないでしょう。
「えっ、私はもうすぐ死ぬの?」と心配になったり、「もう、はやく死んでよ!」と言われているようで、嫌な気持ちになるのではないでしょうか?
こうした思いに至るのは「遺言」を「遺書」と捉えてしまっているからです。
逆の立場になって、あなたが配偶者やご両親に遺言を書いてもらうとしたら、先ずはこの違いをキチンとわかるように説明し、納得してもらうことがとても大事です。
また、配偶者やご両親が「今後のために遺言を書いておくよ」といったとき、「そんな縁起でもないこと言うなよ!」と言ってしまってよいのでしょうか?
託す方も、託される方も、お互いを思い、信頼して、正しい遺言を残しておくことが、安心へと繋がります。
「遺言」「遺書」とは、こういうもの!
遺書は、読んだ人が自分を偲んで泣いてくれるようなもの
遺言は、残された人に面倒をかけず喜んでくれるようなもの
こんな風に理解しても良いのではないでしょうか。
ところで「遺言」をどうよんでいますか?
大分古いのですが手元の広辞苑第五版(1998.11.11)を繰ってみると「いげん、いごん、ゆいげん、ゆいごん」の4つのよみが掲載されています。
言葉は生き物ですから、よみや意味について「これが正解で、他のよみ方や解釈は許さない」といものでもありませんので、遠い過去や未来は知りませんが、今のところよみについては「いごん」「ゆいごん」の二つが一般的でしょう。
日常的に会話の中で使う場合、「いごん」というよりも「ゆいごん」といった方が音として明確で聞き間違いがないと思いますし、実際「ゆいごん」というのが一般的だと思いますが、法律用語として使う場合は「いごん」とよみますので、雑学的に覚えておいてください。
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